【身体のためのほっと一息シリーズ 92】

 

今回は「短期間でのダイエット、リバウンドは危険」についてです。 

 

体重が短期間で大きく変動する「ヨーヨーダイエット」は、危険であることがさまざまな研究で明らかになっています。

 

肥満や過体重の人が体重を適正にコントロールすると2型糖尿病や高血圧、脂質異常症などが改善し、寿命も延ばせることが分かっています。 

 

そのため、健康のために「なるべく手っ取り早く痩せよう」と考える人は多いのではないでしょうか?

 

しかしハイペースで減量に成功している人をみると、かなりの割合でリバウンドをしているようです。

 

このように体重が短期間で大きく変動するダイエットは「ヨーヨーダイエット」と呼ばれています。

 

この「ヨーヨーダイエット」は健康に悪影響をもたらすという研究が、昨年の米国心臓病学会(AHA)の年次集会で発表されました。

 

体重を適正に落とすことは重要だが、リバウンドするような方法ではかえって逆効果のこともあります。

 

体重を5kg以上減らした後で元に戻した女性は、体重が安定している女性に比べ、心臓突然死のリスクが3.5倍に高まることが、米国のブラウン大学附属病院の研究チームによる調査で明らかになりました。 

 

その結果、正常体重内で体重の増減を繰り返す「ヨーヨーダイエット」をしている女性は、冠状動脈性心疾患の死亡のリスクが66%増加することが判明しています。

 

一方で、体重増加後、または体重減少後に元に戻らなかった女性では死亡リスクは増加しませんでした。 

 

中年期に肥満や過体重になると、心臓病で死亡する危険性が上昇するが、その原因には2つのタイプがあります。 

 

(1)ひとつめは、心臓へ血液を送っている血管が脂肪などによってブロックされ血流が減少する「冠状動脈性心疾患」

 

(2)ふたつめは、心臓の電気システムが突然動作を停止し心臓死を迎えるタイプ

 

ニューヨーク大学医療センターの研究では 「心筋梗塞などを起こした患者さんが、その後数年間で大きく体重の変動を起こすと、心筋梗塞や脳卒中などが増えて寿命にも悪影響がある」ことが明らかになりました。

 

その結果、極端な体重変動がみられる人は、心血管疾患や心筋梗塞、心停止、血行再建術の施行や閉塞性動脈硬化症、狭心症、脳卒中、心不全を起こしやすいことが分かりました。 

 

体重変動が最も大きい人では、変動幅が最も小さい人に比べて、死亡リスクは24%、心筋梗塞リスクは17%、脳卒中リスクは36%、それぞれ上昇した。 

 

米国のオレゴン州立大学の研究によると、迅速で顕著な減量は骨量や筋肉の減少の引き金にもなる。 

 

骨量の低下は、特に高齢者で骨折リスクを高め、生活の質に重大な影響を及ぼす可能性がある。 

 

原因1「ホメオスタシス」

 「ヨーヨーダイエット」が起こるのには、本人の意思の強さの問題だけでなく、体の仕組みも関係しています。 

 

その原因のひとつは「ホメオスタシス」という体の機能です。

 

これは体に少量のエネルギーしか入ってこない場合、エネルギー消費をおさえて体を維持する機能のことです。 

 

食事によるダイエットを行うと、はじめのうちは順調に体重が減るが、ある時期になると体重がなかなか減らなくなることがあります。 

 

食事の量にともなってエネルギー消費量も減少するので、それ以上体重が減らなくなるのです。 

 

その場合、ダイエットをあきらめて食事の量を元に戻しても、エネルギー消費が以前より減少しているので、体脂肪が付きやすくなります。 

 

原因2「レプチン」

もうひとつの原因は、脳に作用して食欲に影響する「レプチン」の働きです。 

 

レプチンは脂肪細胞で作られ、太って脂肪細胞が大きくなると分泌量が多くなります。

 

反対に、痩せている場合は分泌量が少なくなり脳は「栄養が不足している」と判断して食欲が増進します。

 

体重を急激に減らした場合、レプチンの分泌量も急速に減り、脳がそれを感知して食欲を増進させるのでリバウンドを起こしやすくなります

 

 「ヨーヨーダイエット」を防ぐための対策は

 

米国心臓病学会(AHA)によると、「ヨーヨーダイエット」を防ぐためには、体重をゆっくり減らしていくことが大切だということです。 

 

目安として、1か月に0.5〜1kgずつ減らしていくと、リバウンドが起こりにくくなり、3ヵ月で1.5〜3kg、1年では5kg程度のペースでのダイエットだと体に負担が少ないです。

 

生活習慣を改善するために行動の目標を立てても、実行できないことで自己嫌悪に陥り、それがストレスとなってダイエットが続かない人もいます。

 

そうならないために、無理なく続けられる目標を立てることも大切です。